英国の医療機器産業

英国は、欧州で第3位、世界全体で第6位の医療機器市場を有しています。英国の医療機器市場は2020年に170億ユーロを超えると評価され、ドイツの410億ユーロ、フランスの310億ユーロに次ぐ第3位となりました。ドイツ、フランス、イタリア、スペインに加え、英国は体外診断薬(IVD)の欧州上位5カ国に含まれています。欧州は世界の医療機器市場の27.6%を占め、米国に次いで2位、全体では1400億ユーロに達していることから、英国は世界の医療機器産業における強力な新興リーダーとしての地位は強固なものと言えます。

 

英国における国内の医療機器製造は、市場で大きな存在感を示している大手グローバルメーカー数社に加えて、市場の約84%を占める中小企業が主な特徴となっています。AbbVie社など多くの米国大企業が英国に子会社を有しており、それが結果的に英国におけるこの産業の規模を拡大させています。英国市場は、画像診断、循環器、体外診断を対象とした医療機器の開発・販売に大きく牽引されていますが、整形外科や眼科を対象とした医療機器も有力な立役者として台頭してきています。

 

英国の医療機器市場は主に輸入主導型の産業であり、医療機器の80%以上が英国で承認・販売されています。このことは、英国医療機器市場が、英国市場への参入を目指す企業だけでなく、英国をゲートウェイとしてより広い世界市場への参入を目指す企業にとって、特に魅力的な市場であることを示しています。こうした企業の最も成功した例の一つが、1996年に英国本部を開設した日本の医療機器開発・供給会社であるフクダ電子です。フクダ電子はそれ以来、世界最大級の医療機器サプライヤーとしての地位を確立し、世界75カ国以上で7億5000万ポンドを超えるグローバルな売上高を生み出すとともに、80以上の英国国民保健サービス(NHS)の公的医療信託および民間病院において大きな存在感を示しています。

 

英国ではNHSが医療機器の主要な買い手であり、独自の規制要件があるため、企業が市場参入を進める上でさらなる困難が生じる可能性があります。英国が2020年1月にEUから離脱する以前は、英国に持ち込まれる医療機器には欧州の規制が適用されていました。これには欧州のCEマーキングが含まれますが、CEマークは2023年6月30日以降、英国で承認されなくなります。ブレグジット前に承認されたEUの医療機器規制は、2023年6月30日まで英国で引き続き有効です。さらに、英国市場に参入するすべての医療機器は、2021年1月1日に施行されたUKCAマーキングの取得に加えて、医薬品医療製品規制庁(MHRA)への登録が必要となります。

筆者:
Anna Cranston

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